【溝口情報局】血糖値を下げる運動法 ~運動するなら、いつがおすすめ?~

糖尿病で通院されている患者さんとお話をしていると、「運動はいつやるのがいいの?」「運動が苦手でも大丈夫?」「運動する時間がないときはどうすればいい?」など、様々な声を伺います。
せっかくやるなら、より効果があって続けやすい方法を知りたいですよね。
今回は、糖尿病を予防・改善するために効果的な運動のポイントを解説していきます。

運動で血糖値が下がる仕組み

まず、運動をすると体にどんないいことがあるのか、血糖値の動きで考えていきましょう。
「体を動かす」ということは「筋肉を動かしている」ということです。筋肉を動かすためには、エネルギー源としてブドウ糖(血糖)が必要です。体を動かせば、血液中のブドウ糖が、エネルギー源として筋肉に取り込まれて血糖値が下がるという仕組みです。

運動するタイミング

血糖値は、食事をして30分から1時間後くらいにピークになり、徐々に下がっていきます。血糖値の上がりやすさ、下がりやすさは一人一人の体質や糖尿病の状態、食事の内容、食べるスピードなどによって異なりますが、こちらの図のようなイメージを持っていただけると分かりやすいと思います。

<血糖値の変化のイメージ>

血糖値変化

では、このグラフをみて、血糖値を下げるためにはいつ運動するのがよさそうだと思いますか?
そうです、運動は血糖値の山がピークになるタイミングで行うのが一番効果的ですね。
血糖値が上がってくるタイミング、つまり食後30分~1時間後までに体を動かすことで、食後の血糖値の上昇を防ぐことが期待できます。

<血糖値の変化のイメージ>

糖尿病は、血糖値を下げるインスリンの働きが悪かったり、インスリンの出る量自体が少なくなる病気です。健康な人の場合、空腹時の血糖値は80~100㎎/dlくらいで、食後をしても2時間もすれば正常範囲に戻ります。しかし、糖尿病の方は血糖値を下げる力が弱いので、血糖値が高い状態が続きやすくなります。食後2時間で測った血糖値が140㎎/dl以上の場合を「食後高血糖」といいます。
食後高血糖は動脈硬化(血管の老化)を進め、脳梗塞や心筋梗塞、認知症のリスクを高めることが分かっているので、食後の運動は糖尿病に限らず様々な病気の予防につながります
健康診断で特に異常がない方も、安心はできません。なぜなら、健康診断で調べるのは「空腹時」の血糖値だからです。食後高血糖は健診では分からず、見逃されやすいので「隠れ糖尿病」ともいわれます。健診の判定に関わらず、食後に動くのは有効ですよ。

ご自分の食後の過ごし方を振り返ってみると、いかがでしょうか。
朝・昼・夕食後、動いていますか?座っていますか?

朝ご飯の後は、仕事や家事、外出の準備などで比較的動いていらっしゃる方が多いかもしれませんね。
もし、食事の後はのんびりテレビをみてくつろいでいる、あるいは横になっている、すぐに寝てしまうという方は、食後の血糖値が高くなっているかもしれません。ぜひ、食後に動くことを意識してみてください。

ただ、食後しか効果がないわけではありません。
1日のうちのどの時間帯でも、運動をすることで消費エネルギーがアップすることに変わりはないので、取り組みやすい時間帯に行えれば良いと思います。何よりも継続することが一番です。

運動を続けるとあらわれる効果

では、日頃から運動を続けるとどんな良いことがあるのでしょうか。
運動を定期的に行うと、インスリンの働きが良くなることが分かっています。
インスリンの働きが悪いと、せっかくインスリンが出ていても、血液を流れる糖をうまく細胞に取り込めず、血糖値が高いままになってしまいます。
ある研究によると、健康な人が有酸素運動を中心とするトレーニングを継続して行った結果、運動をしていないグループと比べてブドウを摂った後のインスリンの効きが良くなったというデータがあります。
つまり、運動をすると、弱くなっていたインスリンの働きが改善し、食事のたびに上がる血糖値が下がりやすくなるというわけです。
ただし、運動によるインスリンの働きの改善効果は、約48時間といわれています。3日後から徐々に低下し、1週間後にはほとんど効果は消えてしまうといわれていますので、やはり定期的に行うことが大切です。
運動の効果を最大限に発揮するには、週末にまとめて運動するよりも、2~3日おきにこまめに行うのがおすすめです

日常生活への取り入れ方

今、あなたが普段している運動があれば、食後30分~1時間のタイミングに行えると効果がアップしますよ。
普段時間がなかなか取れない方や運動習慣がない方は、特別な運動をしようと思わなくても大丈夫です。
「今よりも体を動かす」と考えてみましょう。
例えば、ご飯を食べ終わって食器を片付ける、歯磨きをする、洗濯物を片付ける、デスクワーク以外の業務を入れるなど、何気なくしている動きを、食後の血糖値が上がるタイミングに行うことを意識してみましょう

え、そんなことで良いの?と思われるかもしれませんが、これでも良いのです。じっとしていることをやめるだけでも血糖値は下がると言われています。
ある研究で、ずっと座ってテレビなどを見ている場合と、30分ごとに3分ゆっくり歩く場合、3分スクワットやもも上げなどの簡単な運動を行った場合で食後の血糖値を比べました。すると、30分ごとに立ち上がって少し動くだけで、明らかに血糖値が下がりやすいことが分かりました。
テレビを見ながら・歯磨きしながら、もも上げやかかと上げをするといった「ながら運動」でも良いですし、掃除や洗濯などの家事も立派な運動といえます。
ぜひ、3食の食事や間食のあと、「食べたら動く」という意識をもてるといいですね。

運動するときに注意が必要な人

糖尿病のコントロールが悪い場合、具体的には空腹時の血糖値が250㎎/dlを超えるような場合は、運動中にさらに血糖値が上がってしまうこともあるため注意が必要です。
また、インスリン注射を打っている方や、インスリンを出すお薬を飲んでいる方は、運動することで逆に血糖値が下がり過ぎてしまうこともあります。運動量が多いときは、あらかじめ軽食をとったり、運動前後のインスリンの量を調節する必要がある場合もあります。主治医の先生の指示にしたがって、あなたにあった方法で血糖値をコントロールしていきましょう。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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溝口ファミリークリニック
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院長 溝口哲弘

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